エイズの予備知識
エイズはHIVウイルスによって発症する免疫力を低下させる感染症である。
免疫力が低下するので、普段はなんて事もない菌やウイルスで、身体に深刻なダメージを与えてしまうのが特徴だ。
普段ならなんでもない病気は全部で下記のように23種類あり、これらの病気が発症するとエイズとして診断される。
因みに、HIVとエイズを同一のものとして捉えられる傾向があるが、HIVとエイズは同一ではない。
HIVウイルスが原因で、下記エイズ指標疾患の発症が認められた時点で、エイスと診断されるものである)
(右の数字は、エイズ動向委員会報告による、2013年のエイズ指標疾患分布)
●腫瘍
1.カポジ肉腫・・2.3%
2.浸潤性子宮頸癌・・0%
3.非ホジキンリンパ腫・・3.1%
4.原発性脳リンパ腫・・0.7%
●ウィルス感染症
5.進行性多巣性白質脳症・・1.5%
6.単純ヘルペスウィルス感染症・・1.2%
7.サイトメガロウィルス感染症・・11.1%
●細菌感染症
8.サルモネラ血症・・0.1%
(チフス菌によるものを除き、再発を繰り返す場合に限る)
9.非結核性抗酸菌症・・0.7%
10.活動性結核・・2.6%
11.化膿性細菌感染症・・0.4%
●原虫症
12.イソスポラ症・・0%
(下痢が1ヶ月以上続く場合)
13.トキソプラズマ脳症・・0.7%
(生後1ヶ月以後)
14.クリプトスポリジウム症・・0.6%
(下痢が1ヶ月以上続く場合)
●真菌症(カビなど)
15.ニューモシスチス肺炎・・41.1%
16.クリプトコッカス症(肺以外)・・1.9%
17.コクシジオイデス症・・0%
18.ヒストプラズマ症・・0%
19.カンジダ症・・22.3%
(食道、肺、気管、気管支)
●その他
20.HIV消耗性症候群・・5.7%
(全身衰弱、またはスリム病)
21.HIV脳症・・2.3%
(認知症、または亜急性脳炎)
22.反復性肺炎・・1.3%
23.リンパ性間質性肺炎・肺リンパ過形成・・0.3%
これらの菌やウイルスは、健康体であれば免疫力でほとんど発症する事がないので、一般の人はなかなか聞きなれないものばかりだろう。
中でも最も多く発症が見られるのが、ニューモシスチス肺炎である。
ニューモシスチス肺炎は、以前はイタリアの細菌学者「アントニオ・カリニ」が病原体の発見に貢献した事から、「カリニ肺炎」と呼ばれていた。
「カリニ肺炎」と聞けば、なんとなく聞いた事があるという人も多いのではないだろうか。
しかし、その後の研究でラット検出されたカリニ肺炎と、ヒトで肺炎を起こすニューモシスチスは全くの別物である事が判明し、この二つは分けて呼称されるようになったものである。
ニューモシスチフ肺炎は上記23種類の中でも2013年のデータでは、実に41%を占め、次いでカンジダ症(22.3%)、サイトメガロウイルス感染症(11.1%)と続き、この3つだけで全体の7割を占める構図となっている。
エイズの感染経路
HIVの感染経路は、以下の3通りがメインとなある。
①性行為によるもの
②輸血など感染者の血液感染
③母子感染
HIVは性行為や血液感染がメインとなるが、粘膜や傷口などに感染者の血液が付着し、感染する可能性もある。
ただし、無傷の皮膚に付着しても、感染の可能性は限りなく低い。
また、汗、唾液、涙、尿、便など、体液に接触した程度で感染する事はない。
輸血による感染も現在ではHIVウイルス検査を実施しているので、こちらも心配する必要は皆無だ。
最も危険なのは、やはり性行為となる。
性行為は粘膜接触が頻繁にある上、場合によっては血液接触もありうる状況なので、最も危険な感染経路となる。
検査と治療と注意点
HIV検査は、「スクリーニング」という検査方法で検査されるが、感染後1ヶ月~3ヶ月しないと陽性反応を検出する事ができない。
したがって、疑わしい場合には、思いあたる行為(性行為や血液接触等)があった日から、1ヶ月~3ヶ月後に検査をする必要がある。
もし、感染が確認された場合、残念ながらHIVウイルスを完全に取り除く事はできないが、投薬療法によってHIVウイルスの増殖を止める事が可能となっている。
増殖を抑える事ができれば免疫力の回復が見込めるので、日常生活に支障を来たすことなく生活を維持できる可能性が高い。
以前では、エイズは死に直結する病気として恐れられていたが、現在では治療法も進歩しているので、まずは専門医に正しく診断してもらい、適切な処置を施す事が重要となってくる。